野口勲氏講演会

いのちの種を未来に

  タネのことなら、この人! 固定種のタネに着目し、固定種の保全普及活動に取り組むパイオニアとして知られた野口さん。
 いよいよ、浜松にお招きしての講演会。
 8時間のロングラン講演!

日程:3月22日(日)12時から20時

会場:浜松復興記念館 (浜松市中区利町304-2)

受講費:千五百円

 

 

 

 

申込方法:浜松復興記念館までお電話でどうぞ 053-455-0815

申込受付時間:月曜日を除く9時~16時

先着順で、70人で満員

 

 

野口 勲 (のぐち いさお)氏 プロフィール

1944年東京都青梅市生まれ。野口のタネ・野口種苗研究所(埼玉県飯能市)を経営。固定種(在来種)の種を三代にわたって扱う。オリジナルの『みやま子かぶ』は絶品で、有名な人気商品となっている。

保育園時代から『おもしろブック』で育ち、小学生で手塚狂。中学時代は貸本劇画のトリコとなり、高校頃からマンガ雑誌編集者志望となる。大学を中退して手塚治虫の虫プロに入り編集者として活躍するという異色の経歴の持ち主。徹夜仕事もいとわなかったという。師事した手塚治虫の終生のテーマが、「生命の尊厳と地球環境の持続」に感銘を受ける。家業を継ぐことになった時、一代限りの野菜F1という種子ではなく、種を採りついで生命が持続しながら変化し発展していく固定種野菜の復活を目指して挑戦を始める。店には「火の鳥」の看板を掲げ、日本各地や世界の固定種野菜の種子を収集し、インターネットを通じて全国に販売。

有機農家から家庭菜園を楽しんでいる方々に至るまで、「固定種の野菜を栽培して、どうか自分で種を採っていただきたい」とアピールする。農業は、種まきに始まって収穫、その後の種取りまでのサイクルで、命の種を連綿と育み持続させるもの。種を大切にすることはあらゆる生命の保全に直結する。今「タネが危ない」と警鐘を乱打する。

2008年、山崎記念農業賞を受賞。著書に『タネが危ない』『いのちの種を未来に』などがある。

 

いのちの種を未来に

現在、市販されている野菜のタネは、そのほとんどがF1。F1とは一代限りの雑種(hybrid)です。遺伝的に同一系統で遠縁をかけあわせて作られた雑種ですが、もとの両親より生育が早くなったり、大柄になったり、収量が多くなったりします。それを雑種強勢(ヘテロシス)と言います。F1種の発明は、農業の近代化、商品作物の生産性、流通性の向上という点で画期的な出来事でした。

しかし、このF1種には、2つの大きな問題があります。その一つは、昔ながらの固定種(在来種)を使った野菜よりも味と栄養価が落ちるのです。「野菜モドキ」と言われるゆえんです。もう一つは、翌年の種には使えないことです。同じ野菜を栽培するには、F1種を種屋から毎年買い続けなければならないのです。固定種ならば種にお金はかからず、自家採取して命を進化させながら紡いでいけるのです。

 

F1のカブなんて、まずくて食えたもんじゃない

スーパーに並んでいる「小松菜」という名の野菜で、昔ながらの本当の「小松菜」は一つもありません。茎が太くて葉が厚いのは「小松菜」と「チンゲンサイ」との雑種で、葉の色が黒く濃いのは「タアサイ」との雑種。葉がちぢれている「ちぢみ小松菜」というのは「ちぢみ菜」との雑種です。どれももちろん「小松菜」の味ではありません。葉も茎も柔らかくて繊細な昔の「小松菜」の味は、江戸時代から続く固定種の「小松菜」でしか味わうことができないのです。

固定種の「日本法蓮草」は、九月彼岸頃にトゲのある三角形のタネを水に浸けてまいてからおよそ三ヶ月かかって育ち、お正月頃に食べる冬野菜でした。根が赤くて甘く、生食できるほどアクがなくておいしいのですが、葉は薄く切れ葉でボリュームがなく、寒くなると地面に張り付くように広がって、収穫に手間のかかる野菜でした。それに比べると東洋種と西洋種の雑種であるF1ホウレンソウは、春や夏も周年まけて、わずか一ヶ月で出荷できる大きさに育ち、丸い葉は厚くて大きく、立性で収穫しやすい上、丸粒に改良されたタネは機械でまくことができるなど、農業の効率化に貢献しました。このようなF1ホウレンソウの登場により、私たちは一年中ホウレンソウを食べられるようになったのです。ただ、成育期間が短くなった結果、細胞の密度が粗くなり、大味になって、「紙を食ってるようだ」と言われるほどまずくなったのも事実です。おまけに、葉緑体による光合成の期間も短いので、葉に含まれるビタミンCなどの栄養価も、固定種の五分の一から十分の一に減ってしまいました。

 

<固定種> 農家らが一つの品種で栽培と種取りを繰り返し、性質を安定させた作物。国内で広く栽培され、各地で味や形が特徴的な野菜が生まれた。だが、50年ほど前から交配種の種が普及し、衰退した。

<交配種(F1)> 異なる品種を人為的に掛け合わせた雑種。形などが均一の野菜が大量に採れるが、その野菜から種を取って育てても1代目と同じ特徴の作物は育ちにくいため、ほとんどの農家は毎年、種を買い直している。また、種の生産は多くが海外に移っている。

野口種苗研究所HPより抜粋

続きは、講演会で